外部との交流、幻の東大生インターンシップをふりかえる
私が大学生だった20年くらい前は地域活性化に関心がある友人は誰もいませんでした。もっと言えば、都会から地方に目を向けている若者はかなり少数だったように思います。
大きな転機は、やはり2014年の第2次安倍内閣の誕生です。「地方創生(*)」を国の重点施策としたことだと思います。ポイントは総務省主導ではなく、官邸主導であること。初代の地方創生担当大臣が石破さんだったこともインパクトがありました。これをきっかけに地方を社会課題解決の場として見る学生が増えたことは間違いないと思います。
* 地方創生・・・東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的とした一連の政策のこと。別名はローカル・アベノミクス。地方創生大臣は現在10代目となっているが、初代の石破さんの頃に比べて存在感が薄れてきている。
東大生インターンシップの受け入れ地に選ばれるも・・・
さて、2019年12月、八代にまたとない交流の話が舞い込んできました。なんと東大の学生のインターンシップの受け入れ地域として富山県庁から選ばれたのです。
これは東京大学と総務省の連携事業で、東大の学生が夏休み期間中、全国の中山間地域で滞在型のインターンシップをして、その地域の課題解決に取り組むという実習です。総務省は各都道府県にインターンシップの受け入れ先の地域の推薦をするよう依頼し、富山県庁は八代を候補地に挙げます。もちろん、森杉隊長も東大生の受け入れを快諾します。
実は私も富山県庁の中山間地域対策課の方々と八代環境パトロール隊の打ち合わせに同席させていただきました。八代で何をするかは東大生が考えるということでしたが、私も広報活動、動画制作などで全面的に協力をする約束をしました。
(撮影:2020年12月23日 民宿「氷見っ子」にて東大生インターンシップ打ち合わせ兼氷見里山懇親会
参加者:氷見市副市長(当時 *総務省からの出向)小野さん。富山県中山間地域対策課 宮崎課長(当時)、小川さん、伊藤さん、グリーンツーリズムとやま 橋本理事長、NOMACHI稲垣さん、森杉隊長、浅井事務局長、巻島*順不同)
ところが打ち合わせの2ヶ月後に新型コロナが世界的に大流行。コロナ集束の見込みが立たないため、この企画は立ち消えました・・・。
約20年前から外部との積極的な交流活動
東大生のインターンシップが幻となったのはとても残念ですが、富山県に数ある中山間地域の中で八代が選ばれたことはすごいことです。
この背景には富山県がグリーンツーリズム推進事業として開催している「とやま帰農塾」に八代が受け2004年から10年ほど入れ地として協力したことがあります。とやま帰農塾は参加者に田舎暮らし体験をしてもらいながら、移住者や就農者を増やすことを目的にしたものです。ただ残念ながら多くの参加者は年配の方でその目的は観光だったようです。新規就農者の獲得につながる見込みがなかったため、2014年を最後に八代での受け入れは終了します。
その代わり、2015年からは新たにNPO法人NICEのワークキャンプの受け入れを始めます。NPO法人NICEは地域課題の解決を現地で手伝うことを目的として、ボランティアを派遣する独自の事業を世界中で行っています。スケールの大きな団体です。とやま帰農塾とは異なり、参加者は10代、20代の若者が大半です。詳しくは地域の番人第一話をご覧ください。
コロナ禍でNICEとの交流事業は開催できていませんが、個々人の交流は継続しています。2020年にはZOOMで交流会も行われました。
よそ者視点、組織を活性化させるために
九州や四国など暖かい地域に比べて、東北や北陸など雪国の地域は閉鎖的だとよく言われます。それなのに「地方創生」がスタートする10年前から八代は外部との交流を積極的に行ってきました。氷見で最も実績があります。
一番のポイントは森杉隊長の寛容さだと思います。最もわかりやすい例がパトロール隊の事務局長に浅井世明さんを起用したことです。浅井さんは射水市在住で八代はおろか、氷見市民でさえありません。これは私の想像ですが、森杉隊長は地域外の人を加えることで、組織の多様性を高めようと考えたのではないでしょうか。
浅井さんも地域外の人間という立場や期待をよく理解されたうえで、行動をされてきたように思います。2015年から始まるNICEとの交流は浅井さんが推進してきました。私も浅井さんに声をかけられて、2017年から「地域の番人」の動画制作を始めます。浅井さん自身が地域外の人であることから、外部との交流にとても熱心です。コロナ禍が終わり、NICEのワークキャンプが再び行われることを願います。
(写真上)2017年11月ワークキャンプより
文/写真 地域の番人 監督 巻島大樹
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